「おれは犬がいればいい・・・」

そういう話を電車でするかね。
電車に乗っていたら、後から乗ってきた50代男性と40代女性が
私の背中で話しだした。
私を取り囲むように話しているから、はっきり内容が聞き取れる。
聞きたくなくても聞こえてくる。
どうやら、男性が女性に対して、「うちはそろそろ離婚するつもりだ」的な
内容を告白している。だからといって口説いているわけでない。
電車に揺られながら口説くなんて野暮なことはしないだろうし。
で、冒頭の言葉である。
子どもは娘がいるらしいが、もう成人しているらしく、
「おれは犬がいればいい、娘もついてこないだろうし。
犬を寄こせとは嫁さんはいわないだろう」と
いっている。
前段で、家を出て行くつもりだという話があったのだろう、
「・・・四ツ谷にマンションを探したりもしたんだよね」
40代女性もいう。
「私は20代前半のときに両親が離婚したんだけど、
大きくなってからだから別にショックはなかったな」なんていっている。
「ええー、それって、だから離婚しても娘さんは平気だよってこと?」
と思ったりした。
それよりもなによりも驚いたのは、
「娘よりも家よりも犬」という価値観だ。
50代半ばになって、一緒にいてほしいのは犬なのだ。
犬は彼にとって一番の理解者なのだろう。
確かに犬は文句を言わないし、家に帰ったら一番に出迎えてくれるし、
朝だって見送ってくれるかもしれない。
グチを言えば黙って聞いてくれるし、散歩にもついてきてくれる。
こんないいパートナーはいない、そう思うのも無理なかろう。
私も妻子から相手にされなくなったら飼うことにしよう、
小型犬以外の動物を。