にんにくを搾りあうふたり

引っ越した家の近くは、大学時代に住んでいた場所に近く、
借りていたアパートとはほんの数百メートルしか離れていない。
その大学時代、3年だか4年のときに近くにおいしいラーメン屋ができた。
にんにくを搾ってラーメンに投入するもので、当時から行列ができ、
いまでも行列ができるほどの名店なのだ。
そのラーメン屋に久しぶりに行ってみた。
席は10か12ぐらいしかない。
午後8時半ごろ店に着くと、5人ほど店外で待っている。
中も5人ほど待っている人がいる。
大将がひとりで切り盛りしているから、どうしたって回転が遅い。
20分ほど待っただろうか。やっと席に着いた。
そこでわかった、回転が遅いわけが。
隣に座った大学生らしきカップルが
「にんにくをしぼりあいっこ」していたのである。
「あッ、オレやるよ」「うん、ありがと(ハート)」
みたいなチーチパッパをやっているのである。
それだけかと思ったら、
「あ、今度は私やるね」「うん、ありがと(ハート)」
みたいなことになっているのである。
これじゃあ回転が遅いわけだ。
私は「こいつらのために待たされた」と思い、腹立たしかった。
昔、自分が若い頃、「若い奴がいちゃついているのがムカツク」
といっていたオジサンたちの気持ちがわからなかったけど、
いまはわかる。痛いほどよくわかる。
なんとなく腹立たしい。
「オレみたいに、生にんにくを空きっ腹に入れて、脂汗出ろ!」って
思ってしまう。
ついに、オレもそっちサイドの人間になってしまったということか。
変わらないラーメンの味だけが救いの一日であった。