生きてんだから

麹町の沖縄料理屋さんで、50代半ばの男性ふたりと
飲んでおりました。
金曜だし、みんな一週間の疲れを癒そうと店は混んでました。


仕事の話にはじまって、世の中の話になり、ひょんなことから
家族の話になりました。
50代男性の一方の片はもう十数年来の知り合いであり、
業界の大先輩でもあります。
なんでそういう流れになったのか忘れましたが、
ふとこんなことを言うのです。


「おれのとこは姉ちゃんが生きてたら、おれは生まれなかった。
死産で生まれたんだな。生まれて尻をひっぱたいたけど、
ついに泣き声をあげなかったというんだ。
貧しい時代だったからね、かわいそうに、木のミカン箱が
棺おけ代わりだったんだ。
嫁の妹も21歳で亡くなっている。
結納も済ませて、これから結婚というときに病気でね」


そのあと、何か大切な話があったかも知れないが忘れた。
若くしてなくなった人たちのことを思ったのか、
自然とポロッと泣けてしまった。
飲んでいてこんな失態をしてしまったのは初めてだった。
感極まったのは、自分に子どもが2人も生まれたり、
泡盛と水の配分を間違ったのが理由ではなかっただろう。


生きられる限り、命を燃やし続けなきゃいけないね。
最後にふっとロウソクの火が消えるように、命絶えるまでね。
燃焼しなきゃいけないね。
高みから見てないで、泥にまみれなきゃいけないね。
せっかく生まれて、生きてんだから。