音楽はストリーミングで聴くようになる? 

出版業界にいると情報に対する欲求が強くなる。
いろんな方面から聞こえてくる言葉で共通のものがあれば、
それが次への潮流になる。
最近は「クラウド・コンピューティング」がそれに当る。
クラウドとは雲を意味し、「雲の向こうにある」コンピュータを利用して、
さまざまなソフトを動かすことをいう。
これまではパソコンに、ワープロだの表計算だのといったソフトを
インストールし、個別のハードディスク内にデータを保存していた。
しかし、クラウドではネットを経由して、ワープロ表計算といった
ソフトを提供している業者につなぎ、
そこで実際に使用し、データもそこに保存する。
理論的にいくと、パソコンはネットにつながりさえすればよく、
将来的にはハードディスクもいらなくなるといわれており、
「世界中にコンピュータは5台」なるといわれている。
このクラウドを引っ張っているのが、米国のアマゾンだ。
そして、グーグルは「グーグルドキュメント」のように、
クラウドで使えるアプリケーションソフトをさまざま提供している。
「グーグルドキュメント」はネット上で文書を書き、
ネット上に保存する。だから、ネットにつながる環境さえあれば、
わざわざUSBメモリーでデータを持ち運ぶ必要がない。
動画や音声ではデータファイルをダウンロードするのと、
ストリーミングで聞く方法がある。
クラウドはこのストリーミングの方式に近い。
そうなると、音楽はそのものを買うのではなく、
「聴く権利」を買うことになるかもしれない。
日々私たちは写真や動画、音声、文書ファイルのデータを
増やし続けている。そのなかには二度と振り返らないものも多い。
せっかく紙やフロッピーディスクを減らしたと思っても、
今度はハードディスクが増えていき、写真のネガやビデオテープを
整理するのと同じように、ハードディスク内の整理に忙殺されるのだ。
しかし、これからクラウドが進むと、
「所有」の概念が変わるかもしれない。
ネットを介して「聞きにいく」「読みにいく」「見にいく」「使いにいく」
だけでいいのだ。持たなくていいのだ。
20世紀は「物質を持つ文化」だったが、
21世紀は「物質を持たない文化」になるのかも。
いざ持ってみたら、それが重くなるなんて、
やっかいな存在である、人間ってやつは。