どうなる?! 電子書籍市場 その①

やれキンドルだ、ipadだのと、今年は「電子書籍元年」との呼び声高く、
周辺の話題で業界はたいへん喧しい。
私のような出版業界のはしくれにいる人間でもごく近い将来、
必ず関係することなのでちょっと調べてみた。


そもそも電子書籍とは、紙によらずパソコンのモニターや携帯電話、
PDAや専用機器などの電子機器を用いて読むものである。
「書籍」であるからある一定以上の分量を持ち、章立て、小見出しがあり、
読者が読むのに「本」としての体裁が整っているものをいう。
すでに電子書籍は日本ではある調査では、平成20年に464億円の
市場規模があるとされているが、7割はコミックによるものである。
ではなぜ今年、電子書籍元年と言われていているかというと、
電子書籍を読む電子書籍端末(以下、端末)が米国で非常な売れ行きを
あげていることからである。
アマゾンが販売するキンドルソニーのリーダーが2強で、
この2つの端末が市場をほぼ独占している。
そこに割って入ったのが米国の大手書店チェーンの「nook(ヌック)」
である。ヌックも昨年のクリスマス商戦で爆発的に売れたという。
さらに今年になってアイフォーンを大型化したようなipad
アップル社から発売されることが発表された。
この4つの端末で競争が激化している。
日本市場ではまずアマゾンが日本でキンドルの発売を先行した。
英語版のみの対応ではあるが、日本語対応となるのは時間の問題だ。
このキンドル、これまでの端末とどこが違うか。
実は日本でもソニーパナソニックが端末を発売したが、価格が高く
品揃えもあまりよくなかったため、売れずに生産終了となった。
これらの端末の弱点を補い、人々の利便性にかなった機器になっている。
まず電子ペーパーを使っている点だ。
電子ペーパーは反射型のため、自らは発光しない。
そのため目が疲れにくく、省電力である。
次に通信機器につなぐことなくワイヤレス通信できる点。
パソコンにつながなくてもワイヤレスで電子書籍をダウンロードできる。
次にたくさんの書籍をストックできる点。
これまでは何百冊レベルだったのが、
何千冊レベルまで端末にストックできるまで向上した。
さらに端末自体が2万円台と安く、通信費がかからない。
そして紙の書籍よりも15〜50%オフで購入できる。
印刷や流通のコストがかからないぶんもっと安くできそうだが、
そこはアマゾンのビジネスのカラクリがある。
端末を安くし、通信費をタダにするかわりに、
コンテンツで回収するのがアマゾンのやり方なのである。
消費者にとってはそのほうがいいのかもしれない。
毎月使いもしない通信費に何千円かを支払うのはばからしい。
新刊本の9割が電子書籍で購入できることも品揃えの点では
消費者を満足させる要因になっている。
なぜそういうことができるかというと、出版社のもうけが
紙の本と同じになるように利益配分されているからだ。
同じように、著者の印税も35%だという。
同じことが日本で行われれば必ず日本でも端末、電子書籍市場は拡大する。
しかし、ことはそう簡単ではない。
次回は日本特有の事情について考えてみる。