もっと思いやりを

以前、ホームレス関係の取材をしたことから、
貧困に関するニュースに関心が高い。
最近、よく耳にする「過払い金返還訴訟」についてこんな話を聞いた。
過払い金返還訴訟とは、消費者が消費者金融へ払いすぎたお金を
返してもらうために起こす訴訟のことをいう。
いわゆるグレーゾーン金利に対して消費者に返還を認めた判決が
出たことによって、なだれを打って訴訟が起きている。
しかも過去にさかのぼって請求できる。
消費者金融やその親会社である都市銀行が収益を減らしたのも
この訴訟によるところが大きい。


ここで活躍しているのが弁護士たちである。
多くの過払い訴訟案件を手掛ける、ある法律事務所では、
弁護士費用を払うことができない相談者に対して
ローンを組ませているというのだ。
そもそもお金がなくて借金している相談者に、
ローンを組ませて弁護士費用を出させている。
これを聞いて私はちょっといやな感じがした。
弁護士事務所はローン会社から弁護士費用が支払われるので
リスクを負わない。リスクを負うのはローン会社と相談者だ。
とはいえ、ローン会社は相談者に過払い金が返還されることが
ほぼ確実なのだからリスクは少ない。
問題は相談者だ。
借金で困っているのに、弁護士費用のためにまたローンを組まされるのだ。
「そんなのカネを借りたやつが悪い」という人もいる。
その通りだし、無節操な使い方で消費者金融を利用する人もいる。
それでもなんだかすっきりしない思いがする。


ある債務整理のエキスパートである弁護士は、
弁護士費用を毎月ほんの少額の月賦にして
相談者から支払ってもらうような仕組みを考え出した。
思いやりのあるやり方だと思う。


私がなんだかいやな感じがするその本質は、
「リスクを取らないで儲けるやり方」に対してである。
世の中は、
ハイリスクハイリターン、ローリスクローリターンでできている。
立場の強いものも弱いものも、契約によって対等な立場で
どちらかを選ぶことができるのが望ましい。
しかし、現実はそうなっていない。
言葉は悪いが、立場の強いものが弱いものを「利用して」、
ローリスクハイリターンを得ているように私には思える。


「生き馬の目を抜く」のが弁護士の世界かもしれないけれど、
もっと思いやりのあるやり方にできないものか、と思う。