「ガンダム」長寿の理由

いま東京のお台場で「ガンダム」みたさに人が大挙して訪れている。
酔狂な試みが好きな人たちが、実物大のガンダムをつくったからだ。
機動戦士ガンダム」は1979年から名古屋テレビで放映された
ロボットアニメで、今の30代、40代はリアルタイムで番組を
たのしんだ。
かくいう私もファミコンをやるようになる小学2年生までは、
プラモデルをつくって遊んでいたと思う。
そう、とにかくアニメうんぬんよりもプラモデルに夢中だった。
それが今回等身大(?)スケールでつくられるというのだから、
ファンは色めきたった。
大人になってからアニメを見直すと、こんなにいわば政治色の強い
アニメがなんでヒットしたのかなと思う。
宇宙に出たジオン軍が、連邦政府に対して独立戦争を挑む話で、
政治の世界の話そのものである。
その中にほの甘い恋愛とか、悩み、葛藤、挫折を通して
主人公たちが成長していく物語である。
制作は名古屋テレビだから、民法キー局ではない。
だからこそヒットしたアニメだった。
当時の制作者のひとりが語っていた話によると、
ロボットをアニメで動かすにはコマ数が多くなり、絵も多くなり
コストが上がってしまうので、できるだけコストを抑えるために
登場人物たちを饒舌にさせたのだという。
そうすれば、口だけ動かせばいいので時間が稼げる。
そのために物語がより深いものになっていったというのである。
ロボットアニメなのにロボットが動かず、人間がしゃべりまくる。
だから今になっても大人の鑑賞に堪えられる作品になったわけだった。
もし民法キー局で制作されていたら、ふんだんな制作費をバックに
ロボットが大迫力で動き回り、単純な勧善懲悪のストーリーに終始し、
短命アニメに終わっていただろう。
プラモデルのヒットももしかしたら、
「アニメの動きの少ないロボットを自分で動かしてみたかった」からでは
ないかという気もする。
実は、恋愛や自己実現、そのゆえの悩み、葛藤、挫折、努力・・・という
このアニメの要素は文学そのものである。
普遍的テーマがあるからこそ長く愛されるのだなあ
お台場の人ごみを見て、そんなことを考えている。