3000湯制覇のうんちく

日本全国で3000の温泉に入るという酔狂な活動をしていた
元仕事仲間のTさんが、このほどゴールしたというので、
さっそく話を聞きにいってきた。
どこで寝泊りしたのか、どんな食事をしていたのか、どれくらい資金を
使ったのかといった素朴な疑問から、
「湯の花とは何か?」「温泉に含まれる炭酸ガスについて」など
温泉にまつわるうんちくも教えていただいた。
そもそも全国には3000の温泉場があることから、
1年をかけて3000の温泉に入ることにしたらしい。
温泉場が3000なので、温泉施設にしたらその何倍か、何十倍あり、
湯船にしたらもうそれこそ何十万、ひょっとしたら百万の単位で存在する
かもしれない。
ただ、泉質という面でみれば、そんなに湧き出ているわけではないので、
3000ぐらいということになるのだろう。
そういうわけだから、「全国の温泉を制覇した」と言ってもいいわけだ。
途中で何度かメールしたりしていたのだが、1日に8湯をノルマと
していた彼は、しばらく温泉に入らないでいると禁断症状が出たらしい。
それを彼は「何か調子がでない感じ」と表現したのだが、
温泉で禁断症状が出る話は初めて聞いた。
温泉について疑問があったら彼に聞いているが、やはり詳しい。
「天然温泉」と「かけ流し」の違いを聞いたときは、わかりやすかった。
「天然温泉」と「かけ流し」の概念はまったくの別もので、
まず、天然温泉については、温泉は天然であるのが当たり前なので、
昔は天然温泉という言い方はなかったという。
しかし、最近は市街地にも温泉を掘るようになったので、
もともと市街地にある、水を沸かしただけの普通の銭湯と
差別化するために「天然温泉」なる名称ができたのだとか。
だから、老舗の温泉はわざわざ「天然温泉」などと謳ったりしない。
一方、「かけ流し」というのはお湯の使い方についての語句で、
お湯を循環させる循環風呂と対比するものだ。
湯量の多いところでは「かけ流し」にできるが、
そうでもないところは「循環風呂」となる。
なので、本当に温泉かどうかを見極めるのは、
「かけ流し」かどうかだけでは不可能である。
そこで、「じゃあ温泉っていったいナニ?」という話になる。
法律では、
「源泉温度が25度以上であること」
「リチウムイオン、水素イオンなど19の成分のうち1つ以上が
規定値以上含まれていること」
以上の2つのうち、1つが満たされていれば温泉と標榜していい。
この温泉法は昭和23年に制定されたのだけど、
それまでは冷泉とか鉱泉と言っていたものが、法律制定によって
温泉という言い方に統一されたということなのだろうと
私は理解している。
温泉旅館のチラシには「源泉かけ流し」とか「天然」とか
こういう言葉がたくさん書いてある。
今の人たちは「源泉」とか「天然」とか「有機」とか「自然」とか
そういう言葉が非常に魅力的に聞こえるようで、
実際はどんなものかわかったもんじゃないものもたくさんあるから
気をつけたほうがよさそうだ。


話が横道にそれたので戻そう。
彼に言わせると、ロケーションのいい温泉はだいたいお湯が塩素臭くて
泉質は悪いらしい。逆に泉質を重視すると「3人入れてやっと」の湯船に
なってしまうらしい。
ロケーションと泉質を両方満たそうとすると、
一泊数万円の有名旅館に泊まらなければならない。
ということは、温泉旅館を選ぶなら、「泉質」なのか、
「ロケーション」なのか、「風情」なのか、「料理」なのか、
何を重視するのか、ある程度絞ったほうがいいということだ。
温泉旅行にはテーマが必要だということだ。
ということで、いろいろと勉強になったが、まだ聞き足りない。
今後また一緒に仕事をするなかで、また聞けたらいいな。