遠くに離れているから言えること

いつものように50代男性たちと居酒屋で飲んでいて、
老人介護についての話題になったとき、
「老人施設に親を入れて、家族はすぐにその日のうちに帰って、
その後、会いにもいかない人が多い。けしからん」という。
「でも、それは遠くに離れている人だから言えるのであって、
一緒に住んでいる人は大変な思いをして介護している。
親が早く死んでくれないかと思っている人も大勢いる」といったら、
彼は絶句してしまった。
さっきまであんなに陽気に話していたのに。
彼は郷里に親を残して東京に出てきている長男だ。
「俺は親がどっちか亡くなったら、田舎に帰るよ」という。
でも、それが今だったらうまく行くだろうか。家族はどうするのか。
まだ50代の人たちは老人施設を「姥捨て山」に近いイメージで見ており、
今の社会環境が老人施設を必要不可欠にしているのを
理解できないのかもしれない。
もちろん、経済的な理由や入居条件が整わないなどの理由で
施設に入れない人もたくさんいるのだけど、老人施設はそんなに
暗いところではない。
認知症が進行して重度のレベルになっている場合、専門の知識のある
スタッフがいる施設のほうが安全だ。
もちろん、家族で最後までみるのが理想だけど、さまざまな環境が
それを許すようになっていないのが現状だと思う。
点数稼ぎをやっている介護施設や老人病院もあるだろう。
しかし、それもある一部の施設である。
自分も必ず老いる。
そのことを考えておくのに早すぎることはないのだと思った。