ライターたるもの

かつて仕事をしたことのある、取引先の編集者が
自宅の近くに引っ越してきた。
奥さんがうちの会社で勤めていたこともあり、子供の年齢も近いことから
交流していこうと思い、自宅近くの居酒屋で話した。
彼は20代の前半に編集プロダクションに勤めていたらしく、
当時は金がないので、銭湯にいくのはもとより、事務所で寝泊りしたり、
電気やガスを止められたりする生活をしていたという。


編集プロダクションはそういう話がすごく多い。
給料遅配なんか当たり前。払われればいいほうで、
何ヶ月も出ない事務所もあるらしい。
書籍を執筆するライターを囲っている編プロも実は少ないらしい。
編集と違って本数が読めないので収入に偏りが出てくるからだ。
週刊誌のライターを囲っているところは一杯あると思うけれど、
書籍を書けるライターのいる編プロは少ないのだそうだ。
だからこそ、私らみたいな編プロの商品価値が出てくるのだと思う。


それはさておき、自分的には事務所に何日も寝泊りしたり、
食う金に困ったことはいっさいない。
これは本当に幸せなことだなあと思う。
「ライターたるもの、死ぬ一歩手前まで貧乏して、はちゃめちゃな生活を
していないと面白いものが書けない」という人もいるが、
そういう人がライターには多いから、逆にぼくのような
普通のサラリーマンのようなライターがいたら、
それはそれで商品価値があるのではないかと思ったりする。


たまに学生時代に貧乏旅行した人の話を聞くとうらやましくも思うが、
そういう体験は今後のたのしみに取っておくことにする。