第三の男

モノクロ映画である。
モノクロ映画はアタリの確率が高い。
なぜなら、いい映画でなければDVDなどになって残されていないから。
時間によって淘汰され、名作だけが残る。
10人が見て2,3人がいいと思えるような映画も残すべきだけど、
いまはそうなっていない。グーグルあたりは全部デジタルで残すような
方法を考えているのだろうけど。


この映画はアメリカ人の主人公が、ドイツに、親友を頼ってやってくる。
主人公は、ちょっとは名の通った小説家なのだが、仕事に困ったので
斡旋してもらうためだった。
親友を訪ねてみると、たったいま死んだところだという。
車にはねられて、ほぼ即死だったという。
しかし、目撃者の証言が微妙に食い違う。
ある人ははねられた男は2人に抱えられて道の脇へ連れられたというし、
別の人は3人に抱えられていたというのである。
「第三の男」はいったい誰なのか。
主人公は警察と張り合いながら、独自の捜査を開始する。


友情と愛と正義が微妙に交差する。
当時はラブ・サスペンスのさきがけのような作品だったのかもしれない。
ラストシーンがとても印象的。
友情より正義をとった男が、裏切られた男を愛した女を待つ。
女は男に一瞥もくれず、通り過ぎる。
タバコに火をつけてひとつふかし、女が通り過ぎると、
そのタバコをポイッと捨てて、やるせない表情を見せる男。
う〜ん、こういうの好き。
感傷的なんだけど、冷徹なシーンでもある。
このシーンを味わうだけでもこの映画をみる価値がある。