映画『イノセント・ボイス 12歳の戦場』

イノセント・ボイス movie

少年の目を通して戦場の生々しさを描いた映画――
というと、もうそれだけでつらい映画だなとわかる。
少年時代にエルサルバドル内戦を体験した主人公チャバの物語。
戦争ものというと、男たちの話ばかり観てきたために
最初はちょっと面食らった。
農村の男たちは政府の搾取に苦しみ、ゲリラとなって抵抗する。
政府は報復として12歳になる男児を強制的に召集する。
親の側の人間を殺す方に回るのだ。
11歳の少年のチャバは、学校の先輩たちが戦場に連れられて
いくのを見送る。いつかは自分もああなるのかと思う。
こういう映画を見ると、どうしようもなく戸惑う。
何を思えばいいのだろうか。
戦争の悲惨さか? それとも今の自分の恵まれた環境か?
新聞の国際面を見れば、毎日世界のどこかで紛争が
起こっていることを知ることができる。
けれども、「70人死亡」「死者100名以上か」の見出しに、
自分との関連を見つけられない。数字が何を意味するのかわからない。
感覚は麻痺し、単なる数字の羅列と化す。
死んだ子どもも大勢いれば、生き残った子も大勢いる。
死んだ子と生き残った子にどれほどの違いがあったろう。
映画での子どもたちは、つらい環境下でも無邪気に遊び、
恋をし、家族と暮らし、懸命に幸せのありかを探し当てようとする。
そこに少しの、ほんの一握りの希望がある。