消えた掲示板

Eメールが普及して消えたものはたくさんあろうが、
あれもそうだなと思う。


駅の伝言掲示


です。
ぼくが東京に来た1995年ごろ、
初めて駅の伝言掲示板というものを見た。
たしか野球部での試合の帰りだったと思うが、
そのころはまだ携帯電話もあまり発達しておらず、
周りの友だちもほとんどもっていなかった。
あのころの掲示板には、「先にいってるね」byケイコ
みたいなやつとか、「〇月×日に定期券を落とされた方、駅事務所で
お預かりしています」といったことが書かれてあった。
今ではあの伝言掲示板を置いている駅があるのだろうか。
置いてあったとして、ケイコのような書き込みをする人は
どれだけいるのだろうか。
ぼくはあの掲示板に書き込んだことはない。
あの掲示板がなくなっていることに気づいたとき、
しまった、と思った。
何か書き込んでおけばよかった。
そういう経験をしとけばよかった。
できれば、彼女との待ち合わせのときなどに、
しゃれた一言を書いてみたかった。ケイコがうらやましい。
必要のなくなったものはなくせばいい。
自明のことだ。
でも、たぶん今後、あの掲示板を復活しなければならない日が
来るような気がする。
そして、そのときはあの掲示板にしゃれた一言を書くのだ。


「人生とはこの掲示板のようだ。
昔、必要でなくなったものが、
今になって、必要となるときがある」


なんて。