苔は好きですか?

転石苔を生ぜず


というイギリスの諺がある
(「ことわざ」と書こうとして「床技」になった(笑い))
もとは「転職や転居を繰り返していては、地位も財産も築けない」
という戒めの諺だったのだが、最近は
「どんどん行動する人は、時流から取り残されない」という
プラス面で受け取っている人もいるという。
これは苔をどのように捉えるかの世代間ギャップである。


ある寺の和尚が若い僧侶に、庭の掃除を命じた。
若い僧侶は庭に生えていた苔までキレイに落としてしまった。
褒められると思った若い僧侶は、逆に和尚から大目玉を食らった。
「この苔が生えるまでにいったい何年かかると思うのじゃ!」
というわけであった。
若い人は「苔」なんかないほうがいいじゃんと思う。
でも私ぐらいの年代になると「苔玉もいいよね」なんて思う。
苔は雑草ではないのだ。


振り返って、長く地味な努力が今の社会は忘れられている。
苔は何年もかかってその勢力地を拡大するのに、
今の世の中では「そんなの意味ねえよ」と一蹴されてしまう。
私たちも総理大臣も性急に結果を求められている。
苔を生じる時間的余裕がない。
どうやら私たちの満たされない感はここに起因しているように
思えてしかたない。
私が古い人間なのでしょうか。
いつだったか、庭の苔をいじるのが趣味という
中小企業の社長に取材したことがあった。
「苔をいじっているときは、頭がからっぽになるから
ストレス解消になる」というのだ。
私たちに苔をいじる、いろんな意味での余裕があるか。