そのへんのバランス

「まだ寝てる 帰ってきたら もう寝てる」


これは数年前のサラリーマン川柳です。
ぐうたら妻を嘆く夫のつぶやきですが、私、子どもに対して
今こうなってます。
朝が遅いぶん、夜も遅い。どんなに早く仕事を終えても、
家に着くのが午後7時半になります。
平均して9時半から10時ぐらいでしょうか。
寝かしつけるのを早くしたので、帰ってくるともう眠っているか、
まさに寝かしつけているかのどちらかの状態です。
眠るのが早いと早朝に一度、起きて母乳を飲み、また寝るので、
だいたい私が家を出るまで子どもは眠っているのです。
「寝顔しか見られない」って話がよくあるけど、ほんとだなあと思う。
だったら、早く起きればいいじゃねーかといわれればその通りなんですが。
でも、自分がいざそうなってみたら、やっぱりさびしいものですね。
早く帰ってきたいところだけど、名指しで来る仕事も増えている昨今、
全部受けるのが原則だし、断るほどエラくないから、帰宅も遅くなる。
独り暮らしならそれでもいいが、いまはそうはいかない。
奇しくも上司からは、「そのへんのバランスをうまくとってね」と言われた。
「カミさんを大事にするように」とも……。
アンジェラ・アキの歌の詩にこういうのがある。
「野心と愛の調和がとれず 誰もが彷徨っている」
そういう言い方もあるかもしれないと思ったりする。
バランスというものが、ときどきよくわからなくなる。
空気中を舞う埃を吸い込むように、見えないものを知らず知らずのうちに
自分の中に取り込み、やがてそれが溶け出さない澱になって己を蝕んで
いく前に、自分なりのバランスの取り方を身につけたい。