豊かさとは何か

スウェーデンに行った知人から、かの国の事情を少し聞いた。
スウェーデンというと、福祉国家として知られていて、
人々はたくさんの税金を支払う代わりに、安らかな老後を送ることが
できるということになっている。
彼らの生活はとても質素なのだという。
ブランドものもないし、着るものも、長く使っている様子だという。
一方、日本はありとあらゆる面で整っている。
便利で、快適である。
しかし、人々は不安である。
その不安はどこからくるのか。
農村に住んでいた人が7割だった昭和初期から、
逆に都市部に住む人が7割になった。
一次産業に従事する人が、三次産業に従事するようになった。
民族大移動が起こったわけだ。
そこで何が起こったかというと、コミュニティの崩壊が起こった。
昔は老いたら、家族のものが面倒をみたが、核家族化した結果、
老人を見る人がいなくなった。そこに、長寿化も重なった。
そうした孤独な老人が命を担保するものは、お金だけになった。
お金がなければ、老人施設に入れないからだ。
不安の源は「お金がない」ことなのだ。
日本は年をとるほど幸せ感を得る比率が下がっていく。
年をとることは、だんだん不幸になっていくことだと考えられている。
今の日本は、お金のある人にとっては、幸せな国であるようだ。
しかし、スウェーデンのような国は、重税で苦しむ人もあれば、
福祉に安心感を抱く人もいる。
どうやら彼らは、「何を豊かだと思うか」という尺度が
根本的に私たち日本人とは違っているようだ。
私たちは物質的な豊かさを豊かさだと思ってきた。
では、このまま物質的豊かさを求めてもいいのだろうか。
スウェーデンでは、病院は森の中につくられなければならないと
法律で決められている。
物質的豊かさを求める今の日本に、そういう法律がつくれるだろうか。
「豊かさとは何か」
スウェーデンの話を聞いて、
高校時代に先生から読めといわれた書名がフッと浮かんだ。