父親たちの星条旗

連作といってもいい、「硫黄島からの手紙」と比べると、
戦闘シーンは少なく、ドキュメンタリータッチの作品になっている。
硫黄島の擂鉢山に掲げた一本の星条旗を撮った写真がすべてのはじまり。
写真に写った兵士3人は、母国に戻り、国民に戦費調達の国債を買わせる
ためのキャンペーン要員となる。
その3人のそれぞれの人生を追っている。
「戦争は金になる」と言われている話の裏側が描かれているわけだが、
監督のイーストウッドの批判は一貫している。
つまり、戦争によって手を下すのは現場の兵士であって、
兵士にはそれぞれ家族があり、それぞれ悲喜こもごもの人生ストーリーが
あること。そうしたかけがえのない人が簡単に一瞬で死んでいくのが
戦争であり、それゆえにむなしく、ばかばかしいことであること。
そして、戦争を命じているのは、武器商人とつながった政府関係者であり、
彼らは直接手を下すことはなく、空調の効いた部屋でディナーを食べて
いればいいという、その理不尽さである。
彼の映画は、普通の人へのあたたかいまなざしがある。
歴史上有名な人だけで、当時の世の中が進んでいたわけではないことを
つつましく描いてみせてくれる。
もうかなりのおじいちゃんのはずだが、イーストウッド監督の戦争映画を
もっとみたいという気にさせてくれる映画であった。