ロッキー・ザ・ファイナル

ロッキー・ザ・ファイナル movie

エンドロールが流れても誰一人として席を立たなかったのは
私が観た映画のなかではこの映画が初めてでした。
「ロッキー」と聞けば、誰しも思い浮かべるあのテーマ曲。
あれほどストレートに努力、根性、闘志、愛を謳った映画はなかった。
それが本作でファイナルになるという。
正直、前作の「ロッキー5」がつまらなかった印象だったので、
「え、まだやんの? もういいんじゃないの」と思った。
で、映画のストーリーも50代になったロッキーが
現役王者と対戦するストーリーだと知った。
ロッキーは「え、まだやんの? もういいんじゃないの」という
世間の声とも真っ向から闘う。
つまり、映画の中のロッキーは、現実の世界でのスタローンそのまま
ということがいえるわけである。
「もういいじゃん」という印象を覆させてもらおうではないかと
公開最終日となる自宅最寄の映画館に足を運んだのでした。
最愛の妻、エイドリアンを亡くしたロッキーは、フィラデルフィア
一角で小さなレストランを営んでいる。あるテレビ番組が企画した
コンピュータによる、ロッキーと現役チャンピオンのシミュレーション
試合が評判となって、本当に現役チャンピオンとのエキシビジョンマッチ
が実現する。そこで、息子との心の結び目もほどけていく……。
感想。
いやもうよかったというしかない。
戦争映画を観たときのような苦しい涙ではなく、
理由もよくわからない静かな涙がとめどなく流れた。
もうやめとけという息子を諭すシーンなんか、ものすごく練られていて
息子にというより映画を観る人に向けたメッセージという気がした。
「夢を持って突き進め」「けっして諦めるな」「人のせいにするな」
「夢は必ず叶う」なんてことを、いま普通の人が言ったら間違いなく
馬鹿にされる。そういう皮肉屋が多くなってしまったから。
そういう人でもロッキーの口からこれらを聞いたら、
「ふーん」と聞く耳を持つのではないかな。
みんながロッキーのがんばりを知っているからね。
フィラデルフィアの雪の中を毎日走ったし、ロシアで薪も割ったしね。
行動している人の話はみんな聞くんです。
でも、なんでこういう作品が今の時代に受け入れられるのか。
ある意味でこういうベタベタなのが、みんな好きなんですね。
ぼくも大好き。
他の人のレビューなんか読んでたら、「ロッキー、ありがとう!」
なんてコメントが無数に出てくる。こんな映画がほかにありますか。
映画の序盤では過去を思い出してばっかりの辛気臭いロッキーだったけど、
後半からは前向きなロッキーになったのがよかった。
過去を振り返ってばっかりだったときも、レストランのオーナーを
たのしそうにやっているところは好感がもてた。
どこまでいっても腐らない。酒におぼれたりしないところに、
ロッキーという人の性根が見えた気がした。
ボクシングの技術的なこととかは抜きにして、年をとることは
マイナスばかりではないことや、情熱をもってことに当たることが大事だ
という「ロッキー」シリーズの原点に集約し、余計なものを
すべてそぎ落とした傑作でした。
結果として、シルベスタ・スタローンとロッキーは、
「もうやめとけ」という世間の嘲笑を封じ込めた。
これぞ男の花道。男の人生はこうありたい。
言うことなし。