華氏911

この一週間で『出口のない海』『ナイロビの蜂』『華氏911』と観てきた。
なんという重い映画ばっかりなのだろう!
ま、好んで観たわけですが。
共通するのは、戦争であれ、利益を追求する企業競争であれ、
割を食うのは末端で現場に赴く兵士や、危険にさらされる一般市民です。
階級社会が終わって、フランス革命以後、国民国家が次々とできて
世界がよくなったように思っていたけれど、実のところ、
現状はそれほど変わっていないんじゃないかとさえ思ってしまいます。
この映画は2004年のアメリカ大統領選に先駆けて公開された。
これは民主党・ゴア陣営のプロパガンダというよりも、
マイケル・ムーア監督がどうしてもブッシュ氏を当選させたくなかった
からつくった映画でしょう。
でも、アメリカ人はブッシュ氏が好きみたいで、ニューヨークの
グランド・セントラル駅の書店では彼の放言録みたいな本が何冊もあった。
彼が二度目に当選したときアメリカ人が期待した政策課題は、
道徳的価値観の再構築だったのだそうです。意外ですね。
でも、ここにきて支持率は超低空飛行を続けています。
イラク政策の失敗が響いているかららしいです。
映画の内容は、9・11でのブッシュ→アルカイダとアフガン戦争
イラク戦争→志願兵の問題という流れになっています。
中東とアメリカの石油利権問題とか、アメリカ政府と兵器メーカーとの
癒着とか本当のところはよくわかりませんが、大量破壊兵器がなかった
のとアフガニスタンイラクの人がたくさん死んで、アメリカの兵士も
たくさん死んだということは事実だと思います。
イラク戦争をオッケーだといっていた人も自分の家族や友人が
戦地に行かなければならなかったとしたら、反対するんじゃないかな。
戦争というのは、実際に人を殺しあう現場の人の感情レベルで
話しあわなければいけないものかもしれない。
ぼくはいつも思う。
兵士を戦争に送る人は、自分が直接銃を撃つわけではないから
「やれ」という指示ができる。
実際に現場で銃の引き金を引く人は、自分の意思で撃つわけでは
ないからできる。「命令されたこと」だから機械的に人を殺せる。
みんなものわかりよすぎるのだ。
こうやって戦争はいつまでも続けられるのでしょう。
アメリカ兵が劇中で言っていた。
「人を殺すたびに魂が少しずつ減っていくんだ」と。
そうした感情レベルで語らずに、国益とか言うから話が複雑になる。
息子を亡くした母親が絶叫するシーンがある。あれが本当です。
戦地に行く勇気がない人はどんな戦争にも「NO」のはずです。
いや、そういう人は「YES」と言ってはいけないはずです。
立場が違うといってホンネを隠すから、建前でものごとが進行する。
みんなが感情で語れば、死ぬ人はきっと少なくなる。
幼稚な考えだけど、そういうことを言う人がもっといていい気がする。
そんなことを考えたのでした。