おもしろい考え方だと思った。
いま「ふるさと納税」なる納税方式を巡って国が議論している。
地方は人材を育成したのに、納税してもらえる段になると、
みんな都会に出て行ってしまうので、割を食っていると考える。
そこで、都会に出た人にもふるさとに納税できる仕組みが考えられたわけ。
これは世に言う「三位一体の改革」にともなっての議論だ。
三位一体の改革とは次の三つを指す。
(1)国庫補助負担金の廃止・縮減
(2)税財源の移譲
(3)地方交付税の一体的な見直し
いま地方自治体は大都市部を除いてどこも財政が苦しいのだが、
これが行われるともっと厳しくなることが目に見えている。
ここでよく考えなければいけないのは、
「富の再配分」ということについて。
田中角栄以来、日本は「世界で最も成功した社会主義国」と言われたほど、
富の再配分がうまくいっていた。
どういうやり方かというと、官僚が業界に規制を加え、競争による企業の
体力消耗をさけて効率的に発展させた。
そこで得た税収を地方に、公共事業という形で再配分した。
地方では利益誘導できる議員が選ばれ、公共事業を地方に持ってくる。
道路や空港や港湾などをつくることで建設業者は儲かり、
そこで富を得た人たちは街に出て飲食店で飲み食いをする。
繁華街がにぎわうことで街は活性化した。
この図式がぴたりとはまったため、
一億総中流、GDP世界第2位の先進国「日本」ができあがった。
ところが、小泉内閣によってその様相が変わってきた。
グローバリズムの名のもと規制緩和し、企業が競争にさらされ、
公共事業は激減した。地方と大都市で格差が生じるようになってきた。
つまり、田中角栄以来の自民党政治によって行われてきた「富の再配分」
のシステムを根底から考え直さなくてはならなくなってきたわけだ。
これは大きな問題で、個人的な格差だけではなく、大都市部と地方の
格差が拡大すると、日本の社会にひずみが出てくる。
「ふるさと納税」にももちろん問題はある。
住んでいる場所に払うべき税金が別のところに払われると
住んでいる場所のサービスは当然悪化する。
引越しを繰り返している人はそもそもふるさとを
どこにすればいいかわからない。
「富の再配分」がどうなるか、今後もとても大きな問題になるだろう。