「ロード・オブ・ウォー」

ニコラス・ケイジ主演の映画なんで、観てみました。
というか、最近、ニコラス師匠はいろんな映画にたくさん出てるので、
追っかけていくのが大変です。でも8割がた観ています。
さて、今回の役どころは武器商人のお話。
法のグレーゾーンを思う存分に突いて、財をなしていきます。
妻には輸入商とウソをつき、偽りの夫婦生活を送ります。
ウソで固められた人生です。
でも、そうすることでしか生きられない人生の悲しさがあります。
この話は実在の人物が元になっていますが、
いささか誇張されたシーンはあっても多くは事実に基づくのでしょう。
よく都市伝説のように囁かれる政府と陰の組織の陰謀など
ほんとはないと言いたいところですけど、あるのでしょうね。
ニコラス扮する主人公と対立する刑事が言います。
「戦争被害者の9割は銃による。大量破壊兵器とか核なんかじゃない。
銃が一番の大量破壊兵器なんだ」
これはたぶん正しいデータでしょう。
国益の名のもとに世界中に武器を輸出している国があり、
それを、内紛を鎮めるために買う国があり、貧しい国はダイヤモンドなど
鉱石と引き換えに銃を手にする。
鉱石を掘り出すのは、めちゃくちゃに安い賃金で働き、
教育を受けられない子供たちです。
そういう背景があって、今の私たちの生活は成り立っています。
どうにも救いようのない現実があります。
主人公は「私が売らなくても誰かが売る。必要悪なんだ」といいつつも
「カネじゃないんだ。なにかでっかいことがやりたいんだ」とも言う。
カネじゃないとしたら、自分が銃を売ることで死んでいった命のことを
どう考えているのでしょうね。
銃規制や兵器の話で必ず出てくるのは、銃や兵器はただの道具であり、
賢く使えば善だ、悪く使うのは悪人であるという論理。
ナイフだって果物の皮をむくのに便利でしょう、という。
しかし、狩猟をしなくてもよくなった今日、銃は人を殺傷する
目的のものでしかないのは明らかです。
アメリカは、ことの是非はともかく、いま現実に起こっている悲劇に
関して手を打つのはとても早いのに、銃に関してはそれがないですね。
どうしてなんでしょう。
政府が兵器を製造する企業と癒着しているからでしょうか。
そんなことを観終わったあとに考えましたが、さすがのニコラス師匠
だけに悲壮感だけでは終わらない感じがありました。
やるせない感じ、矛盾だらけの人物をやらせたら
この人の右に出る俳優はいないです。
もうさすがというしかありません。