やっとできた「PASMO」

「ぼくは、いつも大事にしていた、つもりだった。
ひと月ごとに様子が変わっていっても、ぼくにとって大事な存在だった。
でもある日突然、姿をみせなくなった。ぼくの前から姿を消したんだ。
ぼくが悪いのはわかってる。
大事なものは失ってはじめてわかる。本当にそうなんだ。
どうしていままで大事にしなかったんだろう。
大事な存在だってことはわかっていたはずなのに。
いなくなって困るのはぼくなんだから。
でも、いなくなって気づいたって、もう、遅いんだよね。
いまはどこ? もう知るすべもない。
もしも、もう一度ぼくのもとに戻ってきてくれるなら、
今度は大事にするのに。今度こそ、毎日、「今日もありがとう」と
優しい言葉をかけてあげられるのに。
いまは「次を…」なんて思えないんだ。
いつも右手で握りしめていたあの感覚が懐かしい。
いまはとても右手がさみしい。何か実感のない、薄っぺらなものを
つかまされている感じだ。これが〝失う〟ってことなんだろうな。
無意識にさがしてしまうんだ。ポケットの中を無意識に手で探るように。
でも、わかってる、わかってるんだ。
あきらめなきゃいけないってことは。
でも、どうしてもあきらめきれないんだ。
お願いだ、たのむからぼくのところに戻ってきておくれ。
だって1万8710円もしたんだから。
どこいった、ぼくの、まだ3日しか使ってない定期券やーい。」


これは、2002年9月6日にぼくがかつて書いていた自身のHP
「雑草球場」の中での日記だ。
定期券を新しくしてすぐに紛失した。結局、戻ってこなかった。
そのときの悲しみを、「恋人を失ったときの感情」
になぞらえて、おもしろがって書いた。
読んだ友人からは「バカじゃなーの」と言われた…。
それはさておき、今後は定期券を落としてももう悲しい思いを
しなくてもよさそうなのだ。
関東地域ではJRと、ほぼすべての私鉄、地下鉄、バスをひとつのカード
で乗り降りできる電子マネーシステムが採用される。
それが「PASMO」だ。
詳しくは、専門のサイトを見ていただくしかないが、
このパスモには、記名パスモと無記名パスモがあって、
記名パスモならば、保証金を支払っておけば紛失しても再発行が可能だ。
これまで半年分の定期券を、10万円弱で買っていた。
紛失したら基本的には再発行されなかった。
これからは万一紛失しても再購入しなくてもよくなった。
ぼくにとっては「やっと」という感じ。
もっと早くしてくれたら、よかったのになあ。