いざ、雪見温泉 その2

芦ノ牧温泉では10日の深夜から雪が降り始めた。
雪は降ったりやんだり、積もったりとけたりを繰り返していたが、
夕方から夜にかけて本格的に積もり始めた。
夜は渓谷に面する露天風呂から、ライトで照らされた雪が反射して
幻想的な雰囲気になった。
あたかも無数のホタルが乱舞しているかのようであった。
宿泊した芦ノ牧グランドホテルは、この温泉地でも大川荘と並ぶ
老舗旅館のひとつで、ガイドブックには必ず出てくる。
ウリは料理であると、ホテルのホームページにもでかく書いてある。
この日に出た夕食の内容はすごかった。
仙台牛の焼肉
タラバガニ
フグ
アワビ
というオールスター状態であった。
4番バッターばかりを並べたかつての巨人打線みたいだった。
あまりにも見慣れぬものがそろっていたため、ワイフなど途中から
「どれ食べていいかわかんなくなってきた」
とパニック状態であった。
私はグルメではないから、ほんとのところの味とか、鮮度なんてものは
わからないけれど、とてもおいしかったことは間違いない。
なにより、これでもかと高級食材を並べた意気込みが伝わってきた。
このホテルは、私がこれまで泊まったどのホテル・旅館よりもよかった。
まず従業員の感じがよい。
「ワインのコルク抜きを貸して」とか、
「観光に行きたいんだけど」とか、
「夜食にラーメン食べたいんだけど、割り箸ある?」という
ワガママな客の要望に対してすべて快く対応してくれた。
温泉も雰囲気もすべてよしだったのです。
これだけ満足度が高いのは珍しいことでした。
そこで、思ったのですが、さびれたように見える温泉地で
生き残っているホテル・旅館は「アタリ」である確率が高い
ということがいえるのではないでしょうか?
潰れたホテルがあるのに、なぜ彼らは生き残ったのか。
やっぱりサービスがよかったからです。
口コミで、あるいはリピーターの客が訪れたからでしょう。
気配りなら誰でもできる、心配りはなかなかできません。
料理が並んだ中に固形燃料で熱を加える鍋ものなどが
ありましたが、席に着くとすでに火が入っているものと
そうでないものがありました。
最適な時間に食べられるようにタイミングを計っているわけです。
まったくもってすばらしい心配りでした。
仕事とはこうやってやるもんだと教えられました。
宿泊で温泉旅行をされる方には、ぜひともお勧めしたい一軒です。