GNHを知っていますか?

私は25歳のころから、日本とはなんぞや、日本はこれから
どうすべきか、という本をつくってきた。
そこで議論されたことはつまり、どのようにGDPなり、GNPの
数値を増やし、グローバリズムの中で秀でた国になるか、
というものだった。
そういう本をつくりながら、いつも思うことは、
「結局、GDPしかないのか」ということだった。
これだけ価値観が多様化しているというのに、国は相変わらず、
GDP、GNPといっている。
もちろん、細かい面ではまだまだビジネスチャンスはあるのだが、
もはや日本では主要産業のマーケットは飽和状態であり、
経済は成熟してしまっている。
にもかかわらず、消費を促すために、人々は不安にさらされ、
さまざまなモノやサービスを買うはめになってきた。
資本主義経済では、永遠に消費し続けることでしか、
人々の収入を維持できない状況にまで事態は進展してきた。
その消費の過程で、資源をむさぼり食い、地球環境を破壊してきた。
人は自分の生活がおびやかされない限り、生活をあらためようと
しないが、そろそろ、普通の人ひとりひとりに
その影響が及びつつあり、誰もが気づき始めているのが現状だ。
だが、そうした消費一辺倒から方向転換し、持続可能な世の中の
あり方を模索する人たちが出てきた。
そういう人たちが、あるひとつの指標に注目している。
GNH(Gross National Happiness:国民総幸福量)という。
GNPのプロダクトをハピネスにしたものだ。
これはインドと中国にはさまれた小国ブータンの国王が、
国家存亡の危機に陥ったときに、提唱した概念だ。
ブータンのGNHの概念には、自然と調和し、自国の文化を保存、
継承していくことが盛り込まれている。
幸福は主観的なもので、数値によって表されるようなものではない。
だが、ブータンの人々の暮しを見る限り、日本人にもヒントになる
ような生き方があるような気がする。
私はこれを聞いたとき「これだ!」と思った。
指標がないから迷う。けれど、あいまいな幸福という指標であっても
目標があれば、迷いながらでもそこに到達することができる。
日本はこれだけ豊かで快適なのに、なぜ幸福感が薄いのか。
このGNHという概念を研究していくうえで、
これからの日本が向かうべきものが必ず見えてくるはずだ。