損得勘定ばかり・・・

今、年金と生活保護をめぐる議論が紛糾している。
若い世代からは「払う保険料に比べて、もらえる年金が少ないのは損」
という声が聞こえてくるし、
生活保護に至っては、「何十年も働いて年金の保険料を納めて
きた人より、働かないで生活保護費をもらっている人のほうが
金額を多いのは不公平」という声が年配の人からも聞こえてくる。
そもそも年金とか生活保護ってそういうものだったっけ?
年金は自分が納めた保険料をあとになって受け取る積み立て方式
ではなくて、現役世代が引退世代を支える賦課方式になっている。
いわば「取って出し」なのだ。
だから、「自分の老後は自分で稼いでなんとかする」とか
「払わない人はもらえないだけだからいいんだ」という
考え方は通じないように思う。
それから、生活保護についてもちょっと違うんじゃないかと思う。
そもそも生活保護は、憲法に保障されている最低限度の生活の
ためのもので、年金とはまったく考えが違う。
生活保護にかかる人は働きたくても働けない人であり、
また財産もなく、親族にも援助を頼めない人のためのものだ。
「働きたくても働けない」を捕まえて、「働いてもいないのに」と
いうのは酷というものだろう。いつからそんな冷たい国になったのか。
「自分は何十年と働いてきっちり年金を納めたから、
年金が少なくても誇りに思う」あるいは「自分が高齢者を支えている」
ということでいいのではないか。
以前はこれらのことを言う人はあまりいなかったと思う。
なぜだろう。
「世代間で支えあう」とか「勤労が尊い」などという考え方は
死語になってしまったのだろうか。
こういう考え方はもう古いのだろうか。
年金を払っても、税金を払っても、
「年金払ってるのはえらいね」「税金払うのはえらいね」とは言われずに、
「年金なんか払ってるの?」「税金払うのバカらしくない?」と
言われる。損得勘定ばかりの殺伐とした世の中だ。
足し算と引き算をしては不満、隣を見ては不平、
成功者をうらやみ、失敗者として烙印を押しては蔑む。
人が信じられず、それなのにさびしいといって嘆く。
そんな人ばかりなのか。
たまにそんなところに思い至って暗くなる。