仕事がくれたもの 

ぼくは仕事で20代前半のころから、郵政民営化、会社再建について、
商工ローンについて、官僚組織と省庁の役割についてなどといった、
政治経済の分野の本をつくっていた。
経済学部を出たわけでもないから、一から経済について学んだ。
その先生たちは、他でもない取材対象者だった。
それも、その分野では一流の人たちばかりだ。
ところが、最初は本当に何もわからなかった。
「株式会社」という言葉を事典で調べることから始めた。
そのうち、マクロの日本経済とミクロの個人経済の関わりが
自分の中で結びつくようになってきた。
日経新聞の中の、一見無味乾燥な記事にも、読めば涙するような
人々の努力の姿を読み取れるようになってきた。
ぼく自身、一流大学を出たわけでもない、本当に普通の人だけれど、
やればできることを、身をもって知った。
これらこそ仕事が与えてくれた財産だ。
どんな高い授業料を払っても、こんな講師陣(取材対象者)の
講義は聴くことはできまい。貨幣価値に変えられないものだ。
それなのに給料をもらえるのだから、贅沢の極みだ。
今は蓄えたものを外に吐き出すには早すぎる。
もっと蓄え、成熟させ、自分なりの味を加えないといけない。
その日のために、今日も1日がんばってみる。