ある結婚式②

30、31日と滋賀県に出向いて、大学時代の野球部の同期の
結婚式に参列してきた。
同期は29歳、新婦とも彼を通じて友だちになった。
結婚までのドタバタ話はかなり深刻なものがあった。
右の耳では彼から話を聞き、左の耳では彼女から話を聞いた。
これほど結婚までの紆余曲折を目の当たりにしたことは
いままでなかった。
二人の間には何度か危機があったようだけれども
その都度、持ち直して29日の式を迎えたわけだった。
一度など、「だったらもう別れてはどうか?」と
言ってしまったこともあった。端から見ていて、二人の苦しみ方が
見ていられなかったからだ。
式に出てみて、改めて、ふたりの底にあった、何か絆のような温かい
ものがあったのだなあと思わずにはいられなかった。
やっぱり端から見ているだけでは、ふたりの本当のところはわからない。
彼らは半年の短距離恋愛(神奈川県内)と、
3年半の遠距離恋愛(滋賀―神奈川)を経て結婚した。
3年半のうちに何度も、彼が彼女のところに行ったり、
反対に彼女が彼のところに行ったり、また、中間地の浜松で
会ったこともあった。
彼のほうの仕事や、青年会議所の作業が多すぎ、多忙で彼女に
会えないときもあった。繁忙期になると土日も休めなかった。
寝不足で疲弊しきっているのを見かねて、ぼくは、
「ちょっとぐらい会社を休んだらどうか」
と言ったことがあった。しかし、彼は、
「社員さんたちがやってはるのに、おれだけ休まれへん」
と言って絶対に休もうとしなかった。
将来は家業を継ぐことになる彼だから、責任感も強いようだった。
もちろん、彼女に会えないつらさはあったに違いないが、
男としてやるべきことから逃げられなかったのだろう。
それにしても、ふたりとも健気によく会えない時期を耐えた。
「がんばって好きになるものじゃない」と人は言うが、
別々の人格を備えているふたりだからこそ、がんばることも必要だ。
悩んで、苦しんで、がんばった末に彼らは結婚した。
どんなカップルでもそうだろうが、それなりの波風は絶対にあるもの
だし、結婚してからのほうがもっといろいろなことがあるはずだ。
他人に迷惑をかけないようにという思い上がりを捨てて、
苦しいときは他人を頼ることだ。
頼りないかもしれないが、こっちはその準備はできているのだから。