贋作 

「大人になるということは、ブランド品の名前を覚えることだ」
と言った人がいる(ぼくです)
ある日、私の住居に一枚のチラシが入ってきた。
「閉店祭開催! 有名ブランド品が激安!」
などの文字が躍っている。見れば、バッグからアウトドア商品まで
さまざまなものが9割引ぐらいの値段になっている。
これは行かないわけには行くまいと思ってさっそく出かけた。
以前からリュックサックが欲しかったんですよ
いいものがなくならないようにと、早めにうちを出た。
会場につくと、
あれれ?
なんだ、この人の少なさは!
どうしたんだ、いったい何があったというのだ!
私は動揺を隠せなかったが、それでも気力を振り絞って、
会場を見て歩いた。
ブランドのバッグの売り場に差し掛かったところである。
なんと、グッチやコーチのバッグが無造作に積まれているではないか!
他のわけわかんないブランドバッグと一緒に置かれている。
値段は……1000円だ!
ん、待てよ、なんかちょっと違うよーな……
と思ってよく見ると、
グッチのGがCで、コーチのCがGになっていた!
この二つのブランドはアルファベットをデザインに生かしてあるのだが、
本物と見まがう人もいるかもしれない。
他にもフェンディまがいの品があった。
フェンディの「F」が「E」になっているのだ!
すげー。こうもどうどうとニセモノを売るとは!
いや、ここまでやると、ニセモノとはもはや言えない。
パロディだ。
この店の主人はパロディを売っているのだ。
NIKEがNICEになっていたりとか、ラコステのワニがトカゲに
なっていたとか、洋の東西を問わず贋作はある。
でもこの店の品はいまどき珍しいまでの、贋作の王道だった。
堂々たるものだった。ある意味、感心した!
1000円ぐらいなら買っておいて、
ネットで売ったら、ニセモノコレクターの人が2000円で
買い取ってくれるかもしんないな。
結局、ノーブランドのリュックサックを1000円で買って
帰ったのでした。