知るのがコワイ

アメリカに七年住んで、仕事もしていた人が言っていた。
アメリカ人の働き方って日本人と同じようなもんなんですってね。
だから、アメリカ人は日本人と仕事するのが
すごくやりやすいんですって。
よくヨーロッパの人たちは一か月バカンスに行くって
いうじゃないですか。
スペインなんか、シエスタっていうお昼休みがあって
店は午後三時にまた開くというじゃないですか。
そんだけ欧州の人は仕事していないって。
しかし、だ。
街のお店はそうかもしれないけど、企業のオフィスで
働いている人は違うんじゃないだろうか。
一か月もバカンスに行く人はどういう種類の人なのかな。
ぼくは海外へは豪州にしか行ったことがないのでわからないけど、
話に聞く欧州の人は、日本人が旅に行ったときに出会った人の話であって、
欧州で仕事をしていた人の話ではない。
きっと欧州の企業で働いている人でも、日本人やアメリカ人と
同じように働いているに違いないと思う。
韓国なんてめちゃくちゃガッツで働いている気がする。
ある日本の町工場の社長さんは、社員旅行は東南アジアに行くという。
東南アジアと一括りで言うのは乱暴だけど、総じてそこいらの
国の人々は貧しいから一生懸命働く。
そういうのを見ることで、「自分たちは忙しく仕事をやっている」という
思い上がりを正すためだという。
旅行に行くのと住むのとでは見えるものが全然違う。
外国人を理解するのに、旅人の目から見ただけでは
わからないことが多すぎるんです。
それなのに、ステレオタイプな見方で知ったような気になっている
ことが多すぎる。そんなんで満足していることが多すぎるんです。
そういうのに気づかないで、そのまま信じ込んでるんだ、コワイ。
気づかないで、もう解凍できないぐらいまでに頭が
コチコチになる前に、今のうちに手を打っておかねばと思う。
知ることはたのしいが、知るうちに、知ったような気になるのがコワイ。
たまらなくコワイ。コワイんです。
赤ちゃんのように、何でも初めて聞くような耳と、
初めて見るような目が欲しい。