自責の念 

「最近、久々に凹むことがあってね」
報道関係に勤める友人が切り出す。
自分が取材していた事件の当事者が
自殺したからだという。
その事件の当事者は、地方の農村に住んでいた。
連日、報道陣が詰めかけ、なんやかんやと騒ぎ立てた。
自殺したとき、周りの住民の中には、報道陣に向かって
「あんたたちが騒ぐから、あの人は追いつめられたんだ」
と言う人もいた。
「つまり、自分がその人を追いつめる片棒を担いだんじゃないかと?」
その友人に聞いてみた。
「うーん……、でも、そういうことだろうね……」
自責の念に駆られているわけだ。
いつ自分が同じような立場に立たされるかわからない。
人事ではないと思って聞いていた。
自分だったらどうするか。
凹んでいても何も生産的なことはない。
だったら、このことを忘れずにやっていくしかない。
そして、同じようなことが起こるたび、もっと何かできなかったか、
ちょっとだけ振り返ってみる。
それが、少しでも関与した者にとっての責任だと思うからだ。
凹まないような人間は、そういう仕事をしてちゃいけない。
だけど、いったん凹んだあとは、忘れずに生きていく。
それしかないんだなと思う。