見たいように見る 

人間の視覚は、網膜に映った像を脳の神経伝達物質
感じることによって見ている。
見ているのは結局、脳で見ているのだ。
いかにも毒々しい色をしているキノコは食べないほうがよい。
なぜなら、そういうときは大抵、毒キノコであるからだ。
毒キノコは、毒キノコだからそういう色をしているのではない。
危ないと感じるものを、毒々しいと思うような色に
人間のほうで見ようとしている。
人間はそうやって環境に順応することで、生き延びてきた。
進化の過程で、危ないものは毒々しい色に見えるように
人間のほうが変ってきた。
長い蓄積の中で、私たち人間がDNAの中に刷り込ませてきた
生きるための情報なのだと思う。
「そのように」見ることで自分を守ってきたわけだ。
つまり、人間は見たいモノを、見たいように見ている。
私たちが普段見て美しいと感じるもの。
たとえば、花。
たとえば、草木。
たとえば、川の流れ。
私たち人間がそれを美しいと思えるのは、それを残すことで
自分たちが生き延びようとしているからなのだと思う。
だから美しいと思えるものを残していかないといけない。
それが美しいと思えなくなったとたんに、
大切にしようという気がなくなり、ゆっくりと破滅のほうに
向かって歩を進めることになるのだと思う。
私たち人間が、生き延びようとするなら、
この緑と水に恵まれた環境を、どうにかして美しいままに
残すことが必要だ。
自然を見て、美しいと思えるうちに何らかの手を打って
おく必要がある。
自分に何ができるか、たとえ時間がかかっても考えていく。