ある結婚式

小学生時代と中学1年生まで机を並べた友人の
結婚式に行ってきた。
彼との思い出は…と思い返すのだが、
なかなか思い浮かばない。
彼はそれほど強烈なキャラクターではないので、
そんなに印象に残る思い出もない。
彼とは大学が同じ東京だったので、大学を卒業して
から年に2、3度会う仲だった。
互いのアパートを訪ねあったりして、人生観を
語り合ったこともあった。
時はあっという間に流れて6年ほど経ち、
彼は7年間付き合った彼女とめでたく結婚した。
披露宴から出席して、二次会にも出たのだが、
下らない出し物で騒ぐ友人もおらず、
二人の性格を象徴するような穏やかな宴だった。
周囲の人たちは「彼らはたぶん結婚しないだろう」と
思っていたそうだ。なぜなのだろう。
それが当たり前なのかもしれない。
周囲から見ただけでは、二人の本当のところは
絶対に分からないものだ。
どんなに二人をよく知る友人がいたとしても、
彼らの決断に影響を与えることなどできない。
二次会ではいきなり「サプライズスピーチ」を
頼まれてしまった。
ハトが豆鉄砲を食らったような顔になっていることが
自分でもわかった。
「結婚することが目的ではない。結婚して二人が生き生きと
目を輝かせ、幸せに生きていくことが目的だ」
そんなことを自分に言い聞かせるようにスピーチしたのだった。