結婚にまつわる家と姓の話で、先日、テレビを観ていたら
島田神助司会の『キスイヤ!』という番組でこんなケースがあった。
結婚したい一組のカップルがいて、彼のほうが婿に入るか
どうかというので、彼の父親が頑なに息子の婿入りを
反対するという話だ。
彼女のほうは、父親がおらず、女手一つで育ててくれた
母親の姓を残したいと、彼の婿入りを希望していた。
彼のほうは婿入りを受け入れている。彼女の母親も姓に
関してはこだわりはないのだが、娘が望むことならと
彼の婿入りを希望していた。彼女の母親は「娘の幸せが一番」と
いって、嫁に出してもいいと言っているのだ。
彼の父親は、息子の婿入りを「籍を抜くということは、
親子の縁を切ることだ」と言って譲らない。
彼女の母親は、「娘を幸せにしてやりたい」という気持ちと、
「娘の気持ちを嬉しく思う」気持ちとの間で引き裂かれ、
一方、彼の父親は、「息子を手放すことになることの恐れ」と
「二人を幸せにしてやりたい」気持ちの狭間で揺れている。
番組では双方の家族が会って、家族会議をするところを
放送していた。話し合いは双方譲らず平行線をたどり、
険悪なムードになりつつあった。
父親の息子に対する愛情、娘の母親に対する愛情が
相容れず、見ていて痛々しかった。
見かねた彼がついに、「お互いの家族がケンカするぐらいなら
結婚しなくてもいい」とまで言い出した。
それを受けた彼女のほうも、彼がそう言うならと、結婚を
あきらめると泣きながらぽつんと言った。
それを聞いた彼のほうの父親が譲歩案を示した。
まず3年間、彼女は彼の籍に入る。その後、二人が話し合って
彼女の籍に移るならそれでいいというのだ。
彼女の母親もそれを了承し、もし二人が3年後に
母親の姓を名乗ってもいいというのなら、
「彼をうちにください」と彼の父親に言って頭を下げたのである。
泣きながらそういう母親に、一同が涙した。
自分たちの幸せよりも家族同士のことを考えた彼。
女手一つで育ててくれた母親の姓を継ぎたいという彼女。
なんと心優しい二人なのだろう。
家族にはいろいろな形がある。
マスオさん状態のように彼女の家族と同居はするが、
籍は自分のところに入ってもらうパターンもあれば、
別居はするが、婿に入るというパターンもあるだろう。
家を継ぐ、姓を継ぐということは、まだまだ日本の伝統だ。
いくら夫婦別姓も可能だからといって、それほど事は簡単ではない。
だが、二人の周りの人々が忘れてはいけないのは、
大切なことは、姓や家を残すことではなく、
二人が生き生きと毎日を過ごし、幸せになるということだ。
こういう時代だから、「あげる」「もらう」という考え方ではなく、
結婚は籍の上だけのことにして、正月やお盆は順番に
お互いの家を訪れればいいし、いつでも孫に会いにいけばいい。
嫁に行ったから、婿に行ったからといって、縁が切れるわけではない。
親子の縁はそんなにかよわいものではないはずだ。
結婚は家同士のものではない。二人のものであってほしい。
世の中には、男のほうが家業を継がなくてはならなかったり、
女のほうに年老いた親がいたりしたとき、
二人が同じ屋根の下で寝食をともにすることが困難なことがある。
こうした理由でやむなく結婚をあきらめるカップルも無数にいる。
つらいことだが、そういう事情はどうしたってある。
これらのことを全部ひっくるめて、「縁」と人は言う。
縁なきは所詮まとまらず。
だが、できれば、愛情以外の理由で、大事な人同士が別れを
選ばなければならないような世の中にはしたくないものだと、
しみじみと思ったのだった。