あんたは観たんか?

あんまり言いたくないけど、小泉純一郎氏について一言物申す。
映画好きを標榜している彼は、ブッシュ政権を批判した
ドキュメント映画『華氏911』は観ないと明言した。
「偏った映画は観たくない」と言下に言い放った。

ちょっと待て。
「観たくない」ということは、まだ観ていないということだ。
ならば、まだ観ていないのに、偏っていると、どうして言えるのか。
盟友ジョージから評判を聞いたのだろうか。
前作とも言える、同じマイケル・ムーア監督が撮った
ボウリング・フォー・コロンバイン』はたしかに
よくできたドキュメント映画だった。
だから、ぼくも『華氏911』を観てみるつもりだ。

はっきり言って、映画にしろ、書籍にしろ、偏っていない、
どっちつかずの作品ほどおもしろくないものはない。
映画や書籍に客観というものなどありえない。
主観あるのみ。それだからこそ、おもしろいのだ。
それが独善的であったり、公序良俗に反するものでない限り、
一面的な見方でいいのだ。
一面的な見方で深みを出すには、多面的に見なければ
ならない。多面的に見た上で、一面的に判断するのだ。

それなのに、自分の目で、多面的にも見ようとしないで、
一国の首相として判断ができるのだろうか。
華氏911』を観ろと言っているのではない。
まだ観てもいないのに、誰かの評判だけで「偏った映画」と
決断を下す、その姿勢が情けない。そんなことでは困る。

それは、投票にも行かないで、政治家を批判するのと
同じことではないのか。
自分の目で観て、マイケル・ムーアが映画で言っていることが
正しいか、そうでないか、自分なりに判断すべきだ。

ぼくらはウソの情報に囲まれている。
だからこそできるだけ多くの情報を仕入れ、
取捨選択しながら、どう生きるかを自分で
決めなければならない。
誰かの評判で物事を見るのを止めたり、
見ないで判断するということはできるだけしたくない。
ぼくは理由なき批判をする人にはこう言っている。
「あんたはそれを観たんか?」と。