ハンセン病はらい菌という細菌によって発症する病気で、
身体の変形をともなうことがあり、長く偏見と差別、
奇異の目にさらされてきた。
ハンセン病は業病ともいわれていた。
祖先の因縁によってかかる病気だと考えられており、
隔離することが当たり前と考えられていたのだ。
1931年にはすべての患者の隔離するらい予防法が
成立し、療養所が増えていった。
療養所では徹底的に消毒がほどこされ、
人里離れたところに患者を隔離した。
段階的に元患者の自由は確保されていったが、
「らい予防法」が廃止されたのは、わずか二十数年前の
1996(平成8)年のことだった。
しかし、人間の意識は、法律を変えるようには
簡単に改まらない。
その後もずっと偏見と差別は続いており、
今も完全になくなったとはいいがたい。
特に問題なのは、1949年には日本でもプロミンという
ハンセン病の特効薬が広く使用されるようになっても
長い間、隔離政策を続けてきたことだ。
無関心を決め込んだ、私のような無知な市民一人ひとりが
この政策を後押ししてきた。
無知無関心が差別と偏見を生む。
この構造は、あらゆる難病患者やLGBTなど、
マイノリティに対するものと同じだ。
そういうマイノリティの人たちに対する
やさしい視点というものが、
今の時代は絶対的に欠けている。
その意味で、今こそハンセン病について学ぶ意味がある。