「直葬」に見る傲慢

いまは直葬を希望する人が多いのだそうだ。
直葬とは、葬儀・告別式を行わず、病院から直接火葬場に
送る方式をいう。
葬儀は、宗教的儀式を意味し、
告別式は宗教性のない、いわばお別れの会だ。
何か変に合理主義になっている感じがして寂しい。
私は「自分なんか儀式はいらん」という態度には、
何か傲慢な感じを受ける。
葬送というのは、死者の霊を慰めるだけのものではない。
残されたものが、死者とお別れをして、区切りをつけ、
明日を前向きに生きていくための、精神的ケアの側面もある。
儀式は残された人のためでもあるのだ。
「自分の葬儀はいらない」という人は、
残された人の心情を想像したことがあるのだろうかと思う。
人は一人で生きていけないといいながら、
「自分がいつ死のうが自由だ」「葬儀をするかしないかは自由だ」
というのは、私には傲慢に見える。
その傲慢さの裏には、周囲に迷惑をかけたくないという
やさしさがあることも理解している。
ただ、それでもそんな迷惑は大したことでないし、
これまでさんざん迷惑をかけてきたのだから、
(生きることは迷惑をかけることである)
それくらいの迷惑は気にしなさんなと言いたい。