「自分は勉強ができない」という思い込み

私は自分自身が特別、勉強ができる人だとは思っていない。
高校は進学校だったが、その中でも後ろから数えたほうが
断然早いほどの劣等生であった。
ただ、4年制大学に通ったので、全体から見ればそれほど
勉強ができないわけでもないはずで、たぶん、全体的に
平均的な学生だった。
とはいえ、いまは文章を書くことを生業にしているだけあって、
書くことは得意だった、というか好きだった。
ただし、難しい文章を読むのは苦手だった。
頭のいい人が1度読めば理解できることを、
2度、3度と読まなければ理解できないこともいまだに多い。
仕事で必要な資料などは、そうやって何度か読むことも多い。
そんなのは自分だけだろうと思っていたら、
ある50代の編集者さんから仕事に必要な資料本を譲ってもらった。
そこには黄色のマーカーで重要な部分が記されていた。
「こうやって何回か読まないと理解できないので……」
というので驚いた。
彼は国立大学を卒業して、何十年も本の編集をしているのに
いまだにそうなのだ。
私と同じような人がこの世界にもいるのだと思って
ちょっとうれしかった。
確かに1度読んだだけで理解できる人もいる。
けれど、1度で理解できなければ、2度3度読めばいいだけだ。
1度読んで理解できないのを「自分は勉強ができない」と
思い込んでいる人は多いのかもしれない。
本当はそうではないのに。
大事なのは理解しよう、理解したいという気があるかどうかだ。
それがあれば、時間はかかっても必ず、できるはずなのだ。