「ぼけてもいい」

「最後はボケて死ぬのも悪くないなあ」
とかいう人がたまにいる。
ボケた本人は何もわからなくなるのだから、というのだ。
認知機能が病気や加齢によって衰えると、
どれがコートでどれが下着かの判別もつかなくなる。
コートを脱いだつもりで、全裸で町を徘徊する人もいる。
そういう現実を知ったうえで、そう言っているのかなと思う。
認知症の現実を知らずに、「ボケて死ぬのもいいな」なんて
いうのは不謹慎というものだ。
認知症の患者がいると、家族は心身ともにすり減らされる。
そのストレスは、育児の比ではないと思う。
「ボケてもいい」というのは、年上の家族に向かって言うべき
種類の言葉だろう。
もちろん、そういってもらえる関係を、認知症になる前に
つくっておくことが大事であることはいうまでもない。