「幸せになる必要」

「もっとも進化のスピードが早い生物は昆虫」
というと、昆虫で生きてても楽しくなさそう、幸せなのかな
という人がいる。
でも、生物界においては遺伝子が存続できればOKなだけであって、
一つひとつの固体が幸せになる必要なんかないのだ。
遺伝子はただ種として存続しようとする意志だけ持っている。
昆虫と人間ではその方針が違うだけ。
人間は固体が長く生きられるようにしたが、
昆虫は種が長く存続できるようにして、固体は短命でもよいという
方針をとっている。
たとえば、アリは自分たちのコロニー=巣をつくっている。
アリの固体の一匹一匹は、生きていて楽しいのだろうかと
思うけれども、それは人間の考え方。
アリはひとつのコロニーが、人間でいえばひとつの体をつくる
というふうに考えたらどうだろう。
人間の細胞がいくつか死んでもまた再生するように、
アリの固体がいくつか死んでも、他の個体が生まれてくるので、
コロニーはほとんど影響を受けない。
そのように考えたら、ひとつの固体が楽しかろうと、幸せだろうと
大勢に影響はないということになる。
人間も幸せになる必要はないのかもしれない。
自分は単に次の世代にバトンタッチするだけの存在と思えれば、
自分が幸せになる必要はないと思うことができ、ちょっと気が楽になる。
幸せにならないといけないと思いすぎているところに、
苦しさが生まれてくるのではないだろうか。