『里山資本主義』

『デフレの正体』の藻谷浩介さんという地域エコノミスト
NHK取材班が書いた本です。
NHK広島で中国地方の里山でたくましく生きている人たちを
取材した番組を本にしたものです。
この『里山資本主義』の考え方には、かなりの面で賛同できます。
里山資本主義は、耕作放棄地や間伐材など、田舎で無価値と
されているものに目を向け、生活を成り立たせようとする考え方だ。
エコストーブを使って、薪でご飯を炊いたり、都会からIターンで
田舎にやってきて耕作放棄地を使って無農薬野菜を育て、
その野菜を使った料理を出すカフェをオープンさせるなどの
取り組みについて取り上げられている。
里山資本主義をマネー資本主義とは対極にあるものとして
扱っている。
こういう話をすると、「弥生時代に返れというのか」とか、
「みんなが里山で暮らすのは不可能」と言われたりするのだけど、
藻谷氏も本のなかではっきりと、里山資本主義は、都市生活の
バックアップ機能として必要と言っており、今の都市生活に
まるっきり取って代わるものではないと言っている。
とても現実的な見方だと思う。それだけに著者である彼らが
価値の転換を本気で提言しているのが伝わってくる。
260年も平和な時代が続いたのに、かつての江戸は
300万人しか人がいなかった。
それは耕作地と飲料水を、300万人分しか確保できなかったからだ。
しかし、明治になって交通機関が発達して、大量に物資を中央集権で
集めることができるようになったので、東京の人口が増大した。
本来、人はそれほど密集して生きるようにできてはいないのだ。
人口が集中することで効率的な経済ができるようになったぶん、
満員電車に揺られなければならないなどの弊害も出てきた。
それにエネルギーの問題もある。
これについては、改めて原発の問題を持ち出すまでもない。
このままだと産油国に日本の資産が流出するだけ。
山からエネルギーを取り出す方法を真剣に考えないといけない。
まだまだいろいろと考えたことがあるのだが、この本については
まとまらないので、またの機会に書いてみたい。