子どもの自立に備えて

「空の巣症候群」というのがある。
おもに母親が子供の自立などのときに、
心にぽっかりと穴があいたようになり、
うつ病のような症状となるものだ。
何か仕事をもっていたり、趣味がある人はいいが、
そうでなく、育児にすっかり没頭している専業主婦は
危険性がある。
ひょんなことから、細君とそんな話になった。
私たち親は30代だから、上ってきた坂から平坦な道を歩いている
途中で、あとは下り坂をゆっくり歩くだけだが、
子どもたちは日々成長し、毎日少しずつ親の影響下から距離を置く。
でも親にとって子どもはいつまでも子どもだから、
「まだ小さいのだし」が、
「まだ小学生だし」になり、
「まだ高校生」「まだ20代」になり、
いつまでも子離れできない親になる。
子離れできない親は、子どもに過干渉になり、
悪いときには空の巣症候群になる。
そうならないために、何かライフワークがあったらいいなと思う。
年を取ると「きょうよう」が大事だという。
教養ではなく、「今日の用事」。だから、「きょうよう」。
今日の用事を無理してでもつくらないと、家から出ない。
家から出ないと身体や感覚が衰えていき、衰えも早い。
子どもはいつまでも子どもじゃないから、
いずれ独立独歩の道を歩き出す。
そして、今度は自分たちが心配される番になるのだ。
そのとき、子どもとして一番安心なのは、
趣味でも仕事でも何でもいいから、親が日々生き生きと
暮らしていることだ。それが「こうやって人生を楽しむんだよ」
という「最後の子育ての姿」だろう。
それにはライフワークがいる。ライフワークがあれば、「きょうよう」ができる。
人生は短いっていうけど、現代はとっても長くなっている。
30代はまだ50年ぐらい生きる可能性がある。
50年あったら大体のことは、一流は無理でも二流にはなれる。
二流とは堂々と人に教えられるレベルをいう。それで十分だろう。
子どもに手がかからなくなる日に備えて、
何か1つ、2つ、ライフワークを持てるといい。