言葉のちから

被災地では原発の問題を除けば、しだいに食料の問題から
寒さ問題や居住性の問題に移り変わっていっている。
マズローの「欲求階層理論」によれば、
生理的欲求の次には、安全・安定性の欲求が出てくる。
どんどん移り変わる問題に現場は対応していかねばならず、
関係者の苦労はいかばかりかと推察する。
安全・安定性の欲求の次には
「所属・愛情欲求」が出てくる。
自分が生きるだけで必死だった段階から、家族や友人、知人を
なくしたさびしさが、このときはじめてこみあげてくるのだろう。
よく言われていることだが、この段階にいたってはじめて
私のような、言語を用いる職業の出る幕となる。
言葉は、一言で人をうつ状態に陥れることもできれば、
人生に渡って人を支え続けることができるほどのパワーをもつ。
震災を支援する人々が決まって、「おたがいさま」という。
このおたがいさまという言葉には、「明日はわが身」とか、
「自分がしてもらってうれしいから」というニュアンスを含む。
太古から厳しい自然に対峙して助け合いながら
この列島で生き延びてきた日本人らしい言葉だと思う。
言葉を用いて何か自分も復興に一役買いたい。