「私の頭の中の消しゴム」

若い二人が、社長令嬢と現場労働者という立場の違いを乗り越えて
恋愛を成就させるが、妻が若年性アルツハイマー病になる。
そんななかでも二人は愛を深めていくってなストーリー。
(ネタバレあります。ご注意!)
アメリカだったら、病気のほうに焦点を当てるんだろうけど、
韓国だからラブストーリーがメイン。
だから、アルツハイマー病特有の症状が、二人の愛の深さをはかる
道具になっている印象で、味付けに過ぎない。
そのように見れば、なかなかの好作品なのだが、
アメリカ映画を見なれているせいか、病気の描かれ方が中途半端に思えた。
もっと病気の症状を詳しく描くからこそ、そのつらい現実を
乗り越えていく過程が感動的なものとなる。
とはいえ、いくつか印象に残るシーンはあった。
アルツハイマー型の認知症に特有の記憶障害がある。
「私も忘れるから、あなたも私のこと忘れてね」という台詞が泣かせる。
また、夫は妻から、妻の昔の恋人と取り違えられ、「愛してる」と言われる。
夫は、「妻が本当に愛していたのは昔の男なのか」と苦悩する。
でも、妻を診ていた医師が夫にいいことをいう。
「彼女が誰を本当に愛していたかは、愛されたものにしかわからない。
あんたにはわかるはずじゃないのか」
そんな感じだったと思う。
夫はこれで迷わなくなる。
アルツハイマー型の認知症の記憶障害は、
新しいものから記憶がなくなっていく。
そのため、献身的に介護している後妻に向かって、前妻の名前を呼び、
感謝の意を伝える患者もいるという。
当事者にとってはやりきれない現実がある。
それを乗り越えるのは、愛された記憶だとその後妻はいう。
あまりに切ない話だけど、きれいな終わり方が後味をよくしていた。