なんだかすっきりしないものが残る

日本人の精神性って、こういうものなんだなと思った。
中国で日本人が死刑に処されるということがあった。
麻薬の密輸にかかわっていた人物だ。
日本でこういうことがあると、
「厳罰に処せ。ひどいやつは死刑にすればいいんだ」
というが、いざ中国でそれが行なわれるとなると、
「殺さなくてもいいんじゃない」となる。
同じ日本人として、という思いがたちまち頭をもたげてくる。
日本国内では同じ日本人ということを意識することはないが、
外国となるととたんに日本人意識が出てくる。
中国がいう「法治国家」に対して、不信感を持つ人はとくにそう思う。
これは無理からぬことであり、そればかりか当然のことのようにも思える。
私も一瞬、「殺さなくてもいいのでは」と思ったクチである。
麻薬は瞬間的に人を殺しはしないが、慢性的に心身を蝕み、
質的に人生を奪っていく。麻薬を流通させる者は、殺人、自殺の幇助を
しているといっても過言ではなく、厳罰に処せられるべきだ。
ただ、それが願わくば、私たち日本人が納得できるような法による
裁きの上でのことであってほしいとは思う。
きちんとした裁判が行なわれた上でのことであってほしい。
なんだかすっきりしないこの感覚はなんなのかと考えてみることは、
人、モノ、カネが国境を越えて飛び交うグローバルの時代に、
日本人とは何か、国とは何かを考えてみるきっかけになるかもしれない。