シンデレラマン

ラッセル・クロウ主演のボクシング映画。
1920年代後半から30年代半ばまでという、米国にとっては
世界恐慌の後遺症に苦しんだ、長く暗い時代だった。
ラッセル・クロウ演じるボクサー・ブラッドッグはライトヘビ級の強者
としてさんざんならしたが、度重なるケガでライセンスを剥奪される。
ボクサー時代に稼いだ金は投資に失敗し、港での荷物の積み下ろしの
日雇い仕事に就かなければならなくなる。
彼には3人の子どもと妻がいる。守るべき生活のためならなんでもやった。
そんな彼のもとへ二度目のチャンスがひょんなことからやってくる。


ボクシングにかける情熱と、妻子を思う優しい気持ちを併せ持つ
主人公の行動には素直に共感できる。
対して妻は、夫と子供の健康を切に願う。
だから、危ない試合に出ようとする夫を止めもする。
結末は「そんなことが本当に起こるのか」という感想もつのに
十分なものだった。実話をもとにした映画だから、ボクシングの試合の
結果も本当のことだ。
ボクサーは自分のために戦っていながら、結果的に不況で苦しむ
米国民を勇気付けたことを知り、妻は妻でなぜ夫がそうまでして
戦うのか理由を知る。
びっくりするようなエピソードとかオーバーな演技もなく、
地味ではあるが、堅実にストーリーが進むところは安心して観ていられた。
夫婦愛とか親子愛という、ありきたりなテーマを扱っていながら
静かな感動を覚える。
映画評論家などがいう、いわゆる「良質な映画」なのだと思う。
アメリカの20年代、30年代の雰囲気を味わえる点でも
なかなかおもしろい映画だった。