『自然はそんなにヤワじゃない』

『自然はそんなにヤワじゃない』というタイトルに惹かれて
買いました。新潮選書という1000円の本です。
単行本とほぼ同じ体裁なので割安感があります。
本書では、湖の生態系を研究している著書が、
目に見えるものや、外見のかわいいものを、人間が上から目線で保護
しようとすることの問題点について指摘しています。
人間は視覚からの情報に強く影響されるので、クジラとかイルカなど
かわいい動物は殺すなというのに、醜い動物や目に見えない微生物には
ほとんど思いが至らないばかりか差別している。
また人間が環境を改変したばっかりに生活環境を狭めて絶滅した
動物もいれば、逆に勢力を拡大した生物もいる。
いまある生態系はいまの気象状況など地球環境に適応してできあがった
ものなので、何千年、何万年も前にはいまとは違った生態系が
確立されていたわけです。
で、私たちは自分たちのノスタルジーによって、
「昔の生態系を取り戻そう」といいます。
たとえば、田んぼの用水路などがそうで、コンクリで固めた用水路だと
生物が田んぼを行き来できないので、昔に戻そうという。
でも、田んぼ自体が人工物なのに、なぜ「田んぼがない状態に戻そう」と
いわないのかと著者は疑問を投げかけています。
つまり、生態系とか環境というものは、空間と時間を限定して話を
しないと何も確かなことはいえないということです。
ぼくは地球温暖化が本当に異常なペースで進行しているのだとしたら、
人間の生活を変えることで、それをスローダウンさせるべきだと
思うのですが、そうでないとしたらその環境変化にどんな動物も
対応するしかないのではないかと思うのです。
人間も生態系をつくっている一部ですからね。


ともあれ、目に見えるものばかりに気をとられていたら、
実は目に見えないところで取り返しがつかないことになっていた
なんてことにならないように、考えをめぐらすことが大事だと
いうことなのだと思います。