「群青」

長澤まさみ、佐々木蔵之助の主演映画「群青」の試写を見てきた。
沖縄の離島で育ったひとりの女の子を中心に、その父親や同級生たちとの
やりとりでストーリーは進む。
島には主人公の女の子「涼子」の他に、男の子の同級生がふたりいる。
この三人が三角関係になるわけですね。
山と海の大自然がバックだけに、余計なセリフを使わず、
詩的な言葉で人間関係の微妙な揺れを描いている。
こういうアンニュイな映画はどちらかというと苦手。
「下手なセリフより演者の演技力にものをいわす」という方針なのか、
もっと印象的なセリフがあってもよかったかと思う。
エピソード的にもちょっと物足りなかった。
一見とるにたりないような出来事なのだけど、
あとでそれがジワジワきいてくるようなしかけがほしかった。
関係者が死ぬだけでなく、そういうエピソードがほしかった気がする。
涼子もその父親も、こうしたい、ああしたいということを
ほとんど言わないため、話がどこに向かって行くのかまったく読めず、
それが意外性のあるストーリーになっていたように思う。
ある意味、これが映画的といえばそうなのかもしれないけど、
もっとセリフでわかりやすく観られる映画のほうがぼくは好きですね。


ひとつ気になったのは、登場人物がなぜ死んだのか、どんな病に
なったのかイマイチわからないこと。
涼子は幼いころに母親をなくす。そして、自分は精神の病におかされる。
母親が「ママが生きられなくてゴメンね」と赤ちゃんだったころの涼子に
言っているところを見ると、母親はがんだったのかと思う。
涼子は精神の病ということなんだけど、うつ病の症状そのままだった。
たぶん、病名を出すと患者団体などから「あんな症状にはならない。
誤解を生む」と批判が出るのだろう。
こういうところは、日本の映画人はハンデだと思う。
「母親はがんだった」「うつ病になってしまった」ということで
ストーリーが進めばもっと観る人は納得して観られるのになあ。
そうすることで、同じ境遇にある人は共感することができる。
映画はそういうところがいいと思うんだけど、残念です。


全体的に自然の景色や島の風情なんかも少し伝わってきて、
「ああいうところで1か月ぐらい過ごしたいなあ」と思った映画でした。