「かっこええ」の定義

自宅の最寄り駅の立ち食いそば屋さんで
いつも見かけるご老人がいる。
真っ白な頭髪に、真っ白なまゆげ。
目じりや額に刻まれたシワ。
彼は客ではない。歴とした店員である。
店員か、経営者なのか、雇われ店長なのかは知らない。
風貌が山から下りてきた仙人のようなのだ。
私は「立ち食い仙人」と密かに呼んでいる。
たぶん、80歳ぐらいではないかと思う。
先日、店頭のガラスケースに並ぶおにぎりを置くスペースを
きれいに掃除している彼を見た。
その手つきはまるで、初めて買った新車を拭くようだった。
彼の仕事に対する誠実さが見えた気がした。


かっこええなあ


とぼくは思う。
そんな歳になって働くことだけでも大変なのに、
たぶん立ちっぱなしの厨房で、疲れた様子も見せない。


かっこええなあ


「かっこええ」の定義は人それぞれだけど、
ぼくの「かっこええ」の定義は、
こういうおじいさんの、ああいう仕事ぶりです。