スタンドアップ

DVに苦しむ、二児の母ジョージーは、男の元を離れて故郷に戻り、
炭鉱で働くことで子どもを自分の手で養おうとする。
しかし、炭鉱で働くことは1980年代当時、「男の仕事を奪うこと」と
考えられており、男たちの露骨な嫌がらせ、性的虐待が始まる。
ジョージーは一人でスタンド・アップする。
つまり、たった一人で炭鉱会社を訴えるわけだ。
今ではセクハラという言葉で説明できるが、当時は当たり前のように
行われていて、嫌がらせを理解してもらうことから始めなければならない。
「黙っていれば、職を失うことはない。声をあげても逆効果」
という同僚の女性たちの意見も一理ある。
誰だって闘うのはしんどい。リスクを伴う。
けれども、間違っていることを間違っているという勇気はやっぱり必要だ。
ジョージーは闘う勇気もあるし、子どもたちを守る強い母親だ。
ジョージーはいう。
「自分で稼いで、子どもたちを養う。
はじめて思えるの、私は生きているんだって」
自分で立って歩くということも、もう一つのスタンド・アップだった。
物語は裁判の過程が展開されつつ進んでいく。
その中で、「彼女にもスキがあったんでは?」と思わせるような場面もある。
しかし、それが最後のほうでは「そうではなかったのだ!」という
オチとなって、見事に効いている。
一見、地味で重苦しいテーマを、重層的に描き、うまく時系列を配置する
ことによって、観る者をいっそうひきつける構成にしてある。
これにはうなりましたね。すばらしい。
シナリオ、脚本、小説を書く人にもとても参考になると思う。
この映画は実話を元にしたお話で、その後、全米の企業にセクハラに対する
規定ができ、女性の身が守られることになったということだ。
一人の人間の行動は、これほどまでに影響力があるのだ。
なかなかの佳作でした。ぜひおススメします。