ローマ人のやるように…

芦ノ牧温泉に行ったとき、駅の近くの食堂に立ち寄った。
そこはガイドブックに載るほど有名で、この日も行列ができていた。
私たちは12時40分ごろ店に到着したが、最後尾に並んだ。
待つ人を整理するためのノートには、
私たちの名前の上には10組ぐらいいるようだ。
1時間ぐらい待つかもしれないと思いながら、待っていた。
店内の様子を見ていると、席が空いているのになかなか客を入れない。
中では忙しく従業員が立ち歩いている。
土日だけ人が殺到するので、客をたくさんさばくということに
慣れていないのだな、と思った。
「もっとああすれば、客の回転率があがるのにな」と考えてしまう。
席が空いているのを見ながら、空腹も手伝って次第にイライラしてきた。
食べ終わった人も談笑しながら、なかなか席を立とうとしない。
「東京だったら、列ができていたら口にものが入った状態で
会計を済ませるのにな」と思った。さらに、
「店の対応はしかたない。けれども、列ができているのだから、
食べ終わったらさっさと出ていってほしいもんだ!」
そう思いながら席につき、食事を済ませた。
しかし、あとになって「こっちの考えを持ち込むのはよくない」と
考え直した。
待つ人も「食べ終わったときぐらいゆっくりしたいわな」と
理解を示すのかもしれない。それぐらいどっしり構えているかもしれない。
私はこの地ではよそ者なのだから、自分が住む地域の時間の感覚を
持ち込むべきではない。
店側だって、「儲けよりも、ゆっくり食事をたのしんでもらいたい」
と思っているかもしれない。
昔の人は言った。
「ローマに行ったら、ローマ人がするようにしなさい」と。
頭ではわかっているが、ついついそれを忘れる。
こっちの論理をおしつけ、勝手にイライラし、勝手に不満を募らせている。
自分の不満の原因は、結構そんなところに端を発しているかもしれない。
自分の傲慢さに気づいた旅でもありました。